この前年に発表されて文芸懇話会賞を受賞した室生犀星の小説の映画化。もちろんこれが初の映画化ですが、この後、1953年に成瀬巳喜男監督、1976年に今井正監督で再映画化され、3作ともその年のベストテンに入る評価を得た不朽の名作ですね。私は76年版の草刈正雄と秋吉久美子が主演した作品はリアルタイムで見たことがあるけど、30年以上前に一度しか見たことがないわりには、結構印象に残ってます。 本作の方は60分の中編で若干物足りなさは残ったものの、丸山定夫を初めとした俳優陣の好演が光って、まずまず見応えはありました。PCLの製作だけど、この時代の作品としては比較的フィルムの保存状態も良く、映像の美しさも垣間見ることが出来ました。 それから、音楽を担当したのが、1925年に日本交響楽協会の設立に関わり、日本のオーケストラのパイオニア的存在となった近衛秀麿。この翌年に総理大臣になる近衛文麿の異母弟ですね。当時の日本映画には珍しくモーツァルトなどのクラシック音楽もふんだんに使われていて、ちょっと異質な感じを受けました。
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